
学力を伸ばす本当の近道は「質の高い文化」に触れること
真の実力や学力を身につけるために、最も重要なものは何でしょうか? 私は**「文化的な素養」**だと考えています。
具体的には、優れた文学作品を読む、映画や芝居を観る、美術品を鑑賞する、美しい音楽を聴くといった経験です。これらを日常的に楽しむことこそが、実は学力向上の土台となります。
受験を突破するような学力を高めるためには、文学や芸術に触れるよりも「ひたすら参考書の問題を解くこと」が大切だと、一般的には思われがちです。しかし、一見遠回りに思えても、文化的な素養を高めることこそが「一番の近道」なのです。
PISAのデータが示す、家庭環境と読解力の関係
ここで、一つの興味深いデータをご紹介します。 OECD(経済協力開発機構)が実施している「PISA(学習到達度調査)」という国際的な学力調査があります。少し前のデータになりますが、2009年のPISA調査(平均点が500点になるよう調整されたもの)から、**「家庭にあるもの」と「子どもの読解力の平均点」**の関係を見てみましょう。
まずは、身近なアイテムからです。
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辞書
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持っている:523点
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持っていない:404点
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辞書を持っているからといって、単純に点数が上がるわけではありません。しかし、安価で手に入る辞書すらない環境は、家庭の学習に対する関心の低さを反映しており、それが404点という極端に低い数字に表れていると考えられます。
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食器洗い機
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持っている:519点
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持っていない:522点
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高価な食器洗い機があるご家庭は経済的に豊かだと言えますが、学力にはほとんど関係がないことがわかります。経済的な豊かさそのものよりも、「何にお金を使うか」という家庭の選択の方が、学力に大きく影響するのです。
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学習参考書
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持っている:528点
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持っていない:470点
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学力向上に直結しそうな参考書は、やはり「ないよりはあった方が良い」という結果が出ています。
参考書よりも「詩集」や「文学作品」が高得点になる理由
驚くべきはここからです。学習参考書(528点)よりも、さらに子どもの得点が高くなる「家庭の所有物」があります。
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専門書:538点
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美術品:538点
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詩集:547点
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文学作品:552点
試験に直結しそうな参考書よりも、美術品や専門書が高得点であり、さらに詩集や文学作品が最も高い得点を記録しています。これはなぜでしょうか。
それは、参考書が文化そのものを扱っているのではなく、文化を解説した**「二番煎じ」**の存在だからです。そうした本で学ぶことである程度(528点)の学力をつけることはできても、それを552点にまで引き上げることはできません。二番煎じの環境から得られる学力は、やはり二番煎じにとどまってしまうのかもしれません。
「一流のもの」に触れて目が肥えるということ
一方で、専門書や美術品、詩集、文学作品といったものは、いわば**「一流のもの(本物)」**です。
そうした本物が家庭にあるということは、文化を愛する雰囲気がその家庭にあり、子どもも日常的に質の高い文化に触れているということです。
日常的に良いものを見ていれば、自然と目は肥えてきます。本物の質を知れば、二流のものは避けるようになります。そうした日々の積み重ねの中で、高い水準の思考力や読解力が育まれていくのです。
すぐに役立ちそうなテクニックを追うのではなく、文学や美術といった「質の高い文化」に触れていきましょう。文化を楽しむことは、本来「努力」して行うものではありません。しかし、意識して日常に取り入れていくことが、結果的に一生モノの「一流の学力」を身につけることにつながるはずです。