ルール増殖の果てに。プリンストン大学の「試験監督配置」から見るモラルの限界とコスト
先日、ルールと「ブルシット・ジョブ」についての記事を書きました。
そう思っていた矢先、5月21日の東京新聞のコラムで、まさにこのテーマとリンクする以下のような文章を目にしました。
米国の名門、プリンストン大学が1893年から続けてきた「ルール」を見直すそうだ。ルールとは試験中、監督官は試験会場から退出すること▼「見張り番」がいなければ、学生のカンニングが予想されるが、それでも、学生に任せるというのが当時の判断で、不正があれば目撃した学生が大学に知らせるという仕組みだった▼学生の名誉を重んじたルールだったが、今回、それを改め、監督官を配置することにした最大の理由はやはりカンニングの横行である。 (東京新聞 5月21日コラムより)
AI時代の不正と「モラルの限界」
今回、名門プリンストン大学が130年以上続いた伝統を覆した背景には、電子機器やAIを利用した不正行為が多すぎることがあるそうです。手口が巧妙化しすぎており、もはや学生同士の目撃では不正を把握しきれないのが実態なのだとか。
「あの名門プリンストン大学でさえそうなのか」と驚かされます。 かつては、「紳士たれ(Be gentleman!)」の精神と名誉を重んじる心一つで、自らを律することができていたはずなのに。
モラル低下の裏で生まれる「ブルシット・ジョブ」
この問題は、単なる「学生のモラル低下」として嘆くこともできますが、当然、「ブルシット・ジョブ(無意味な仕事)の増加」という点でも議論できます。
学生を信用できず、試験会場に監督官を配置することになれば、以下のような業務が連鎖的に発生します。
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監督官を雇うための人件費と手配業務
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複数の監督官を管理・統括するポジションの設置
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分厚い「試験監督マニュアル」の作成(余談ですが、センター試験などのマニュアルは相当なボリュームになります)
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膨大なマニュアルの印刷コストと、それを読み込むための時間
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ルールの徹底と不正対策のための事前研修
これらはすべて、今まで存在しなかった仕事です。こうして、果てしなくブルシット・ジョブは増殖していきます。
何も生まない仕事に奪われる時間とコスト
かつては「紳士たれ」という、自律を促す一言で済んでいたこと。 そこに、これだけの莫大なコストと時間が投入される社会になってしまいました。
一番の問題は、これだけの手間暇をかけても、そこから新しい価値は何も生まれず、誰の能力も高まらないということです。ただ「マイナスを防ぐため」だけに、膨大なリソースが費やされていく。
最近、世の中全体を見渡しても、本当にこういう「何も生まない仕事」が増えてきたなと痛感させられます。
