教育文化経営学院

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【合格レポート例】人文地理学:特化係数で描く「高等教育」の地域格差と日本の空間構造

【合格レポート例】人文地理学:特化係数で描く「高等教育」の地域格差と日本の空間構造

「大学のレポート課題、どう書けばいいか分からなくて困っている…」 そんなふうに悩んでいませんか?

とはいえ、完成した立派なレポートのお手本だけをポンと見せられても、「いきなりこんな文章、自分には書けない!」と感じてしまうのは当然のことですよね。

当ブログを運営する教育文化経営学院の「ゼミナール」では、受講生同士でレポートが集団的に検討する時間を設けています。

 

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そこでは、最初から完成形を持ち寄るわけではありません。

最初は「構成案だけ」のメモ書きや、「こんなことを書きたい」という課題意識だけの状態から始まります。そこから一つのレポートがどのように肉付けされ、形になっていくのか、その執筆の過程(プロセス)に居合わせることができるのです。

「ここではどんな点に気を配って言葉を選んだのか」 「資料をまとめる際、どのような点が難しかったのか」

他者のレポートがゼロから書き上がるまでのプロセスや苦労が手に取るようにわかるからこそ、いざ自分が書くときにも、その経験をそっくりそのまま生かせます。

このブログ上で、ゼミナールのような「ゼロから書き上がるまでのプロセス」をすべて体験していただくのは難しいですが、その試行錯誤の末に生み出された【実際に提出し、合格基準を満たしたレポート】を毎週金曜日に公開しています。

今回は、計量地理学的な手法である「特化係数」を用いて、日本の高等教育における地域格差を客観的なデータから描き出したレポートをご紹介します。


人文地理学:特化係数を用いた「高等教育」の地域格差分析

【課題】 各種政府統計等から、都道府県別人口を基盤に、任意の相互に関連する5つのデータ(絶対量)の特化係数を算出して地図化し、その結果についてテーマを設定して、日本の空間構造について地理学的に分析・検討を行ってください。(3,000字以内)

(※作成例では地図・特化係数データ等は省略しています)


はじめに:テーマ設定の理由

本課題では、「高等教育における地域格差」をテーマに検討を行っていく。データはいずれも2020年のものである。  本テーマを設定した理由は、高等教育、とりわけ大学教育に都道府県格差が生じていることを示すためである。東京に住んでいると、大学に進学することは「当たり前」、自宅から通学することが「当たり前」という錯覚に陥ってしまいがちである。しかし、それは正確なものではない。  もちろん今回対象としたデータには様々な限界がある。因果関係で結論づけることはできないが、都道府県格差が生じていることを示すための一助としたい。

1)18歳人口構成比

大学在学者にあたる年齢層の人口構成比をみるために、国勢調査の18歳の人口構成比を用いた。国勢調査は1月1日現在の年齢で集計しているため、厳密な意味での大学入学年齢ではないが、まとめられるデータの中では最も近似的な値を示すと考え、採用した。  18歳人口の全人口に占める割合は全国平均で0.9パーセント、都道府県ごとの割合は、0.7~1.0パーセントとなっている。この後検討する他のデータと比べると、比較的散らばりが小さく、都道府県の格差はそれほど生じていないといってもいいだろう。むしろ、19歳以降、人口を集めている東京で0.8パーセント、特化係数で0.89と平均を下回っているし、1.0を超える地方の道県も少なくない。  したがって、大きくまとめると、18歳人口の全人口に占める割合には、それほど際立った都道府県格差は生じていないと言ってもよいだろう。

2)大学数(人口10万人当たり)

しかし、大学数(人口10万人当たり)になると状況は一変する。絶対量である大学数では都道府県の人口規模による影響を排除してしまうことになるので、人口10万人当たりの大学数をデータとして採用した。  全国平均では0.62校であり、三大都市圏が高く、それ以外の地域は低い傾向にある。  まず東京圏であるが、東京都に学生が移動するため、埼玉県や千葉県、神奈川県は平均以下の数字となっている。神奈川県の特化係数は0.53と全国平均の半分近い数字であるが、実際には東京都の大学に通学できるため、教育機会を奪っていることにはならないと思われる。  他の大都市圏も同様の傾向が見て取れる。静岡県も愛知県に通学するケースが多いと思われる。

この点で特に注意すべきは離島である。離島の場合は地続きで他県に通学することができないためだ。その点、沖縄県の特化係数は0.89であり、平均を下回っているものの、「善戦」している地域である。それに対して鹿児島県の0.60は憂慮すべき数字である。鹿児島県の1/3は離島であり、これらの離島には大学が存在しない。ゆえに、他県の特化係数よりも高い値であっても、大学教育へのアクセスを奪っていることを示す数字となっているのである。

3)高等学校卒業者の進学率

この人口10万人当たりの大学数が、高等学校卒業者の進学率に直結している。一般的には、大学数の特化係数が低い県は高等学校卒業者の進学率の特化係数も低い傾向にあるが、大都市圏の周辺部(埼玉県、千葉県、神奈川県)では、大学数に比して進学率が高い傾向にある。東京都や京都府といった大都市圏の中心都府が周辺の県の18歳を吸収しているということになる。  前節で言及した鹿児島県と沖縄県についてみておこう。大学数が少ない鹿児島県は、進学率の特化係数で0.78と、佐賀県と並んで最下位である。相対的に大学の多い沖縄県では0.73とそれを下回っている。沖縄県の進学率の低さは、家庭の経済力、学力が低いといった、今回分析の対象としたデータでは明らかにできない面があるので、本稿での検討は割愛する。

4)出身高校所在地県の県内大学への入学者割合(対大学入学者数)

このデータは、「自宅から大学に通えるか」を示すものである。もちろん本人の希望で県外大学に進学するケースは別であるが、経済的な理由等でそれがかなわない場合、この数字が低い都道府県では、進学率の低さに直結するものであると思われる。 | この数字は、進学率と同様に、大都市圏(東京圏、中京圏、関西圏)で高く、東北地方や岡山県、広島県を除く中国地方、福岡県を除く九州地方で低い傾向にある。  低い県では、県外の大学に進学せざるを得ない。その場合の経済的負担は、授業料の比ではない。授業料免除等の措置が近年取られる傾向にあるが、これらの地域からの進学の困難さは、授業料にあるわけではない。自宅から出て、家賃等、授業料よりも高額の経済的負担に耐えなければならないという問題なのである。  大都市圏以外の道県における例外は、北海道と鹿児島県、沖縄県である。このうち鹿児島県と沖縄県は「離島」の傾向が高く、県内大学で充足する傾向が際立って高い。それゆえに、地続きで県外大学に通学することが難しい同県においては、大学数を増やしていくことが重要な課題となる。先にも述べたが、大都市圏周辺部の大学数が少ない埼玉県や千葉県、神奈川県等々とは、まったく事情が異なるのである。

5)最終学歴が大学・大学院卒の者の割合(対卒業者総数)

これまで述べてきたように、日本では、どの都道府県に生まれるかということが高等教育へのアクセスに直結してしまっている。結果、最終学歴が大学・大学院卒の者の割合にも大きな格差が生じている。もちろんこの数字は、その地域出身者の最終学歴を示すものではなく、最終学歴が大学・大学院卒である者が居住する都道府県を示すにすぎないものであるが、見つけることのできたデータの中で、本稿の主旨に最も近いものであると考え、採用した。  最終学歴が大学・大学院卒の者の割合は、全国平均で17.3パーセントである。これを上回っている地域は、自宅から大学に通学しやすい大都市圏であり、北海道、東北、中国、四国、九州といった地方では、一部の県を除き、特化係数が1.0を下回っている。  繰り返すが、この数字の低さは、これらの地方出身者の進学率の低さとイコールではない。これらの地方から大都市圏の大学に進学し、そのままその大都市圏に居住する者が一定数存在すると思われるからだ。

おわりに

これまで述べた数字を軽視するわけにはいかない。今、ペアレントクラシーが叫ばれ、親の学歴と子どもの学歴が相関することが指摘されている。それゆえに、次の世代の学歴にこの数字が反映し、このサイクルが繰り返されることが予想されるからである。  このように、大学へのアクセスという観点からみると、日本社会には大きな格差が生じている。教育の機会均等の観点からも、この格差を縮小していくことが強く求められる。


【引用・参考文献】


【まとめ】「東京の当たり前」をデータで疑う!客観的指標が持つ説得力

いかがでしたでしょうか。今回は、計量地理学的な手法である「特化係数」を用いた人文地理学のレポートをご紹介しました。

このレポートの素晴らしい点は、冒頭で述べられている「東京に住んでいると陥りがちな錯覚(大学進学や自宅通学が『当たり前』)」を、客観的なデータによって見事に覆している点です。 18歳人口には格差がないのに、「大学数(アクセス)」や「自宅からの通学可能性」には強烈な格差がある。この因果関係を、特化係数という統一した指標で段階的に(1から5の項目へと)明らかにしていく構成は、非常に論理的です。

また、数字の裏にある「地理的特性(離島性など)」を深く洞察している点も高く評価できます。同じ特化係数の低さでも、地続きで東京に通える埼玉県と、海を渡らなければならない鹿児島県とでは、その意味(教育機会の喪失)が全く異なるという指摘は、まさに地理学的な視点です。

ゼミナールでも、こうした客観的データに基づき、主観的な思い込みを排して社会現象を分析する姿勢を重視します。皆さんもレポートを書く際は、自分が「当たり前」だと思っていることがデータでも証明できるのか、ぜひ疑ってみることから始めてみてください!

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